転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


582 完全に固まっちゃう前にもういっぺんかき混ぜた方がいいんだって



 アマンダさんに卵と生クリームを泡立ててもらって、それに牛乳とお砂糖を混ぜてから僕は混ぜながら凍らせる事ができる泡だて器をその器に突っ込んだんだ。

 でね、そのままちょっとの間放置して、材料がちゃんと固まるまで待ったんだよ。

「そろそろいいかなぁ」

「ええ。表面上は固まったように見えるわね」

 横からのぞき込んでたアマンダさんも、もういいよって言ってくれたもんだから、僕は泡だて器を取り出そうとしたんだよ。

 けど、

「あれ? 固まっちゃって取れないや」

 ちょっと置いときすぎちゃったのか、アイスクリームがしっかり固まっちゃてて取り出せなかったんだ。

「ちょっと貸してみて。あら、ほんと。もうかなり固まっているのね」

 だからアマンダさんに代わってもらったんだけど、そしたら泡だて器の持つところを何回か揺さぶってからズボって簡単に引き抜いちゃったんだよ。

「そっか。ゆすればよかったんだね」

「ええ、硬いといっても氷じゃないんだから、ゆすれば隙間ができるからね」

 そんな風にお話をしながら、僕とアマンダさん、それに出来上がるのを横でずっと待ってたキャリーナ姉ちゃんとで固まったのを木のおさじで掬ってパクリ。

 そしたらさ、ちょっとじゃりじゃりするけど。ほんとにアイスクリームが出来上がってたんだ。

「すごいや。ほんとにアイスクリームになってる!」

「ええ、思った通りそれっぽいものはできたわ。でも、やっぱり本物に比べるとかなり味が落ちるわね」

 僕はちゃんとアイスクリームになってるってびっくりしたんだけど、アマンダさんはこれじゃあちょっと納得できてないみたい。

 もうちょっと何とかならないかなぁって、難しいお顔になっちゃったんだよ。

「えっと、私も一口貰っていいかしら?」

「うん、いいよ」

 そしたらね、ちょっと離れたとこでレーア姉ちゃんたちと待ってたお母さんがこっちに来て、一口頂戴って。

 だからいいよって言ったら、さっそく木のおさじで掬って食べたんだよ。

「なるほど。変な固まり方をしてますね」

「ええ。これでも十分おいしいのでしょうけど、ルディーン君のものを知っているとどうしても物足りなくて」

 アマンダさんのお話を聞いて、お母さんもそうだねって。

 でもね、もしかしたら何とかなるかも? って言うんだよ。

「実は私も、家で同じような感じのものを作ってしまった事があるんですよ」

「えっ? でも、カールフェルトさんのお宅では、ルディーン君の魔道具を使って作っているんですよね?」

「ええ。でも一度スティナちゃんが、私の孫が急かすものだから早く固まるように材料を少なくして作ろうとしたんですよ」

 いっぱいあるより、ちょびっとの方が早く固まるでしょ?

 だからお母さんは魔道具に材料をちょびっとだけ入れて作ろうとしたんだって。

 でもそしたらかき回す羽根のとこまで届いてなかったもんだから、さっき作ったのより、もっとじゃりじゃりなものができちゃったそうなんだよ。

「だから慌てて材料を足して、それを固まった物に混ぜて練るようにかき混ぜたんですよ。そしたら初めてルディーンが作った時の、まだ固まりきる前のアイスクリームとよく似たものができたんです」

「僕が最初に作ったのって、スティナちゃんが食べたいって言った羽根を抜いてから冷やす前のやつ?」

「ええ、そうよ」

 これを聞いた僕はびっくりしたんだよ。

 だってさ、それって後は冷やして固めればアイスクリームになる、そのちょっと前のやつとおんなじって事なんだもん。

「その時はこれでもいいかと思ってそのまま食べてしまったけど、あれをそのまま冷やせばアイスクリームになったんじゃないかしら?」

「うん、絶対そうだよ」

「なるほど。途中で材料を混ぜるか完全に凍りきる前にかき混ぜる事によって、空気をさらに含ませつつ全体の温度を均一にすれば口当たりがもっと良くなるかも?」

 アマンダさんはそう言うとね、牛乳と生クリーム、それに卵とお砂糖を混ぜたものを作ってさっき作ったものに混ぜたんだよ。

 でね、おっきな木のさじでグッグッグってかき混ぜてから、もういっぺん泡だて器の魔道具を突っ込んだんだ。

「これで多分大丈夫だと思うけど」

 それからちょっとの間ほっといて、固まった頃にアマンダさんが魔道具のスイッチを切った後に持つとこを何回か揺さぶってからズボって引き抜いたんだよ。

 でね、それを手に持ったまま、反対側の手に持ってた木のおさじで出来上がったもんを掬って食べたんだ。

「うん! ルディーン君も食べてみて」

 そしたらすっごい笑顔になって、僕も食べてよって。

 だから早速期のおさじで掬って食べてみたんだけど、そしたらさっきかき混ぜながら凍らせる魔道具で作ったのとおんなじもんが出来上がってたんだ。

「すごいや! かき混ぜるので作ったのとおんなじ味がするよ」

「ほんと!? ルディーン、私にもちょうだい」

「うん、いいよ!」

 僕に続いてキャリーナ姉ちゃんが、その後にお母さんが木のおさじで出来上がったアイスクリームをパクリ。

 そしたら二人とも、ほんとにおいしいねってニッコリ笑顔になっちゃったんだ。



「さて、アイスクリームが普通の冷凍庫でも作れることが解ったって事で」

「後は何を入れたらおいしいかだね」

 途中で冷凍庫でもアイスクリームが作れるってお話になって止まっちゃったけど、元々はこのお話をしてたでしょ?

 アイスクリームが完成したって事で、僕とアマンダさんは、そのお話の続きをする事にしたんだ。

 でもね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが、不思議そうなお顔で頭をこてんって倒したんだよ。

「あれ? ベニオウの実で作るんじゃないの?」

「キャリーナ姉ちゃん、それだと僕がいないと作れないよねってさっきお話してたじゃないか!」

 さっき一度このお話をやめようって時に、ベニオウの実で作ればいいじゃないかって感じのお話になったでしょ?

 だからキャリーナ姉ちゃんは、ベニオウの実で作ったアイスクリームを食べれるって思ってたみたいなんだよ。

 でもさ、特別な魔道具が無くっても作れることが解ったから、中に入れるものも特別なものじゃない方がいいよね。

 だからいっつも手に入るもので、アイスクリームに入れたらおいしいものは何かなぁってお話をするんだよってキャリーナ姉ちゃんに教えてあげたんだ。

「そっか。じゃあさ、セリアナの実のジュースは? あれの甘氷はおいしいもん。アイスクリームに入れても、きっとおいしいと思うよ」

「セリアナの実かぁ」

 セリアナの実のジュースって、甘くてとってもおいしいんだ。

 だから僕もキャリーナ姉ちゃんのお話を聞いて、それもいいかなぁって思ったんだよ。

 でもね、アマンダさんがそれはどうかなぁって。

「なんで? 甘くておいしいのに」

「ええ、そのまま呑むのなら美味しいわよ。でもアイスクリームの材料と混ぜたらどうかしら?」

 あっ、そうか。

 セリアナの実のジュースは確かにおいしいけど、香りとかはそんなに強くないから牛乳や卵に混ぜたらあんまり味がしなくなっちゃうかも。 

「アイスクリームはそれ単体でもおいしいから、かなり強い個性のあるものじゃないと負けてしまうと思うわよ」

「そっか、もっと強い味やにおいのするもんじゃないとダメなんだね」

 それを聞いた僕は、前の世界にあったアイスクリームの事を思い出したんだ。

 そう言えばイチゴとか緑色のお茶のアイスクリームって、普通のアイスクリームとは全然違う味がしたっけ。

 って事は、やっぱりあれくらい強い味じゃないとダメって事だよね。

「チョコレートがあれば一番いいのに」

「ちょこれと? 聞いた事が無い名前だけど、ルディーン君、それは何かな?」

「えっとね、カカオって実の種から作るもんで、茶色くて苦いけどとってもいいにおいがするもんなんだよ」

 僕はね、前の世界にあったチョコレートの事を一生懸命教えてあげたんだよ。

 でもアマンダさんは、そんなの知らないって言うんだ。

「もしかしたら帝都とかに行けばあるのかもしれないけど、私は聞いた事が無いなぁ」

「そっか。あっ、そうだ! カカオってお薬になるって言ってた気がする」

 何のお薬か知らないけど、前の世界で見てたオヒルナンデスヨでお砂糖とかがあんまり入ってないのは、ちょこっとずつ毎日食べると長生きできるよって言ってたんだよね。

 って事はさ、もしかしたらお薬屋さんに売ってるかも?

「薬になるの? そうかぁ、なら今度マロシュさんに、そのかかおってのの事を知らないか、聞いておくわね」

「うん、お願いね」

 カカオからどうやってチョコレートを作るのはあんまりよく覚えてないけど、前の世界のテレビでよく言ってからすっごく細かくなるまで擦ってから使うって事だけは知ってるんだよ。

 だからもしカカオの種? 豆? が見つかれば、なんとかなるんじゃないかなぁ?

 僕が見つかるといいなぁって考えてたらね、

「ルディーン、何を入れたらおいしくなるか解った?」

 キャリーナ姉ちゃんが僕の肩を揺さぶりながら聞いてきたんだよ。

「あっ、そっか! それを考えないとダメなんだった」

「そう言えばそうね。じゃあ買って来た果物を並べて、もう一度考えてみましょうか」

 そしたらその事を僕だけじゃなくってアマンダさんも忘れてたみたいで、ちょっと照れたようなお顔で果物を並べ始めたんだよ。

 でもね、そこに並んでるのは食べたらおいしいものばっかりだけど、アイスクリームの味に負けないかって聞かれたらう〜んって考えちゃうものばっかりだったんだ。

「ベリー系だったら少しはましかもしれないけど、さっきクイーンベリーの話を聞いてその味を想像しちゃったからなぁ」

「うん。あれよりもおいしくなるのは、この中には無いと思うよ」

 多分クイーンベリーよりもおいしいベリーのアイスクリームは無いと思う。

 じゃあ別の果物って事になるけど、前の世界にあった果物のアイスって言うと桃かなぁ。

 あっ、でも桃に似た果物って言うとベニオウの実だからダメだし。

 そう思いながら果物を見て行ったらね、アマショウの実が目に入ったんだ。

「チョコレートがあったら、アマショウの実のアイスクリームがおいしいと思うんだけどなぁ」

 前の世界にもね、チョコバナナって言うチョコレートとアマショウの実によく似てる果物を使ったアイスクリームがあったんだよ。

 でもさっきアマンダさんに聞いたら、チョコレートもカカオも知らないって言ってたもん。

 だからこれも無理だよなぁって思ったんだ。

 でもね、

「そうか、アマショウの実があったわ!」

 アマンダさんが急にこんな事言い出したもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだよ。

 だってさ、アマショウの実はおいしいけど、セリアナの実のジュースとおんなじでそんなに香りは強くないもん。

 だからダメなんじゃないの? って聞いたんだけど、

「違う違う、そのまま食べるのじゃなくって、かなり強めに熟成をかけたものを使うのよ」

「そっか! 透き通ってるくらいの奴だったらおいしいかも?」

 アマンダさんに言われて思い出したんだけど、そう言えば前に透明になったアマショウの実を牛乳に混ぜて飲んだら美味しかったっけ。

 それがおいしいんだったら、アイスクリームにいてれも絶対おいしいよね。

 そう思った僕は、早速アマショウの実を熟成させようとしたんだよ?

 でもね、何でか知らないけどアマンダさんにとめられちゃったんだ。

「どうしたの、アマンダさん。透明なやつでアイスクリームを作るんじゃないの?」

「ええ。それはそうだけど、ルディーン君が熟成させたもので成功しても、私たちじゃ作れないじゃないの」

 あっ、そっか! そう言えば僕の熟成はアマンダさんたちのとはちょっと違うってマロシュさんが言ってたっけ。

 って事で熟成はアマンダさんがする事に。

「腐らせないように気を付けないとね」

 そう言いながらアマンダさんは、いつもよりもちょっと強めに熟成をかけ始めたんだ。

 そしたらアマショウの実の皮の色がどんどん黒くなってったもんだから、僕はちょっぴり心配になっちゃったんだよ。

 だって中が透明になるまで熟成をかけても、僕がやると皮の色は変わんないもん。

 だから僕、ドキドキしながら見てたんだけど、

「うん、こんなものかな」

 アマンダさんを見るとちゃんと成功したみたいで、ほっと一安心。

「アマンダさん、これをアイスクリームに混ぜるの?」

「いいえ、どうせだから他の材料と混ぜて、最初から作ってみる事にしましょう」

 僕の魔道具を使えば、あっと言う間にアイスクリームができちゃう事はさっきの実験で解ってるでしょ?

 だから出来上がったアイスクリームに混ぜるんじゃなくって、最初っから他の材料と混ぜて泡だて器の魔道具でかき混ぜながら作る事にしたんだ。


「これは……思った以上においしいわね」

「うん。前の僕が熟成させたのを牛乳に混ぜて飲んだのより、こっちの方がアマショウの実のにおいが強くっておいしいよ」

 食べてみてすっごくびっくりしたんだけど、僕が熟成させたのよりアマンダさんが熟成させた方がアマショウの実の味が強くなるみたいで、前に飲んだアマショウと牛乳のジュースよりもこっちの方がおいしかったんだよね。

 それはどうやら僕だけが思ったわけじゃなくって、あの時一緒に飲んだレーア姉ちゃんもおんなじ意見みたい。

「ルディーンが作ってくれたものよりすこし酸味が強いっぽいけど、むしろ私はこっちの方が好きかも」

「私が熟成させたものはルディーン君のに比べてちょっと癖が強く出ていたから少し心配したけど、牛乳と生クリームのおかげでそれが押さえられているからよかったわ」

 それにアマンダさんも、熟成させすぎた時に出てくる味やにおいを心配してたみたいなんだけど、アイスクリームにしたら大丈夫だったってほっとしてるんだよ。

「さらにおいしくするにはもうちょっと研究が必要だけど、さらに改良が進めばお店に出せるレベルになりそうね」

「アマンダさん、これ、お店で売るの?」

「う〜ん、それはちょっと難しいかな」

 アマンダさんはね、アイスクリームをお店で売るにはいろんな事を考えないとダメだから無理なんじゃないかなぁって言うんだよ。

「売ろうと思ったら大量に作らないといけないでしょ? それに作ったら作ったで、それを保管するための大きな冷凍庫がいるもの。それだけの魔道具を買えるのなんて、子爵位以上の貴族様くらいよ」

「そっか。お家で食べるのと違うもんね」

 前にルルモアさんが、いろんな魔道具に使うようになったから氷の魔石が高くなってるって言ってたもん。

 それにおっきな冷凍庫を作ろうと思ったら、それだけおっきな魔石がいるでしょ?

 そしたら普通の冷凍庫よりもすっごく高くなるから、そんなの普通のお店じゃ買えないよね。

「アマンダさんのお店で売ってたら、絶対みんな買いに来ると思うんだけどなぁ」

「私もそう思うけど、うちの店の規模じゃ無理ね」

 アマンダさんはね、それでももし売る事ができる状況なった時の為に商業ギルドに行ってくるって言うんだよ。

「商業ギルドに? なんで?」

「あら、これだけのお菓子だもの。特許をとっておかないと、どこかのお貴族様が思いついて先に売りだしたら困っちゃうじゃない」

 他の貴族様が特許を取っちゃうと、冷凍庫が買えるようになっても売る事ができなくなっちゃうでしょ?

 だから後になって後悔しても遅いから、今のうちに権利だけは取っとくんだって。

「そっか。そしたらアマンダさんのアイスクリームが食べられなくなっちゃうもんね」

「違うわよ。”ルディーン君”のアイスクリームでしょ。ちゃんと特許申請も、ルディーン君の名前で取っておくからね。あっ、でも」

 こういうお菓子の特許って、ちゃんとした作り方を書いて出さないとダメなんだって。

 それにね、できたら作るための魔道具も一緒に出した方がいいから、泡だて器の魔道具も貸してほしいなぁっアマンダさんは言うんだよ。

「もうかき混ぜながら凍らせる魔道具の特許は申請してあるって話だけど、商業ギルドに実物がある訳じゃないからね。これを持って行った方が、向こうも検証がしやすいし、提出した道具は後でちゃんと返却してもらえるから一緒に出した方がいいのよ」

「あれ? 普通の冷凍庫で作るアイスクリームの作り方は一緒に特許をとらないの?」

「あら、そんなものを提出したら、それこそどこかの商会が先に売り出しちゃうじゃない」

 普通の冷凍庫だったらおっきな商会が倉庫に使ってるから、持ってるとこがいっぱいあるでしょ?

 だから作り方が解っちゃえばいっぱい作るのも置いとくのも簡単だけど、特別な魔道具が無いと作れないのならそれが売り出されないと作る事ができないもん。

 それにお菓子の職人さんならアマンダさんが考えたのとおんなじように冷凍庫だけで作れる方法を思いつくかもしれないけど、アマンダさんと一緒でそんなおっきな冷凍庫、買えるはずないよね。

「ただ、かき混ぜながら凍らせる魔道具はいずれ売り出すだろうから、その時は真っ先に売り出すつもりよ。初めて売り出したお店という名を他に取られるのは流石に癪だからね」

 アマンダさんはね、僕の頭をなでながら、その時はまた手伝ってねって笑ったんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。

 これでアイスクリーム編、というかお菓子作り編はおしまいです。

 いやぁ、思った以上に長くなってしまったw 文字数にして普段の2倍以上になってしまいましたね。

 前回の最後にアイスクリームの完成まで書くのは平日には無理と書きましたが、案の定そこまでだけでも調べたら普段とほとんど同じくらいの2000文字超えだったし。

 もうちょっと文章をまとめられるといいのでしょうけど、ただ、これは入れたいなぁと思ったものは全部入れてしまうので毎回このような結果になってしまう次第です。

 因みにですが、材料をちょっと凍らせては冷凍庫から取り出してかき混ぜる事で簡易的にアイスクリームを作る事ができるというのもネットではよく見かけるレシピだったりします。

 ただその場合でも、やはり生クリームを泡立てたものを使った方が口当たりが滑らかになるそうで、それを推奨している方が多いようですけどね。


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